認知症(もの忘れ)

認知症 (もの忘れ)

平成22年時点で、日本の認知症高齢者は280万人と推定されています。

さらに高齢者割合の増加により、平成37年には470万人に達すると考えられています。

 

 

単純計算で行けば国民の50人に1人が認知症であり、高齢者の約1割が認知症と診断されています(国が発表したデータをもとにしています)。

 

認知症は、単なる「もの忘れ」ではなく、「ものを忘れてしまっていること」、を理解できなくなってしまいます。また、外出先で迷子になったり、料理中に火事を起こしたり、尿などで汚れた服をそのまま着ていたり、「もの忘れ」だけの問題にとどまりません。

 

認知症は、

 早めに見つけて、早めに対応することが大切です

 

専門医は、主に「神経内科」や「精神科」です。

 

しかし、「もの忘れ」に悩む方や家族は、まず「かかりつけ医」に相談してみましょう。

認知症のために受診するとなれば、本人も嫌がるかもしれませんが、「かかりつけ医」への受診なら受け入れやすいと思います。

 

医師会が主体となり、「かかりつけ医認知症対応力向上研修」が行われており現在までに医師の約10人に1人が研修を受講しています。

主治医が、きっと一緒になって、良い解決策を探してくれるはずです

 

 

現代の医学では、残念ながら、アルツハイマーなどの進行した認知症を治す薬はありません。

それでは、「早期発見しても治らないなら、意味がないじゃないか!」、と思われるかもしれません。

 

しかし、早期に医療機関を受診することのメリットは、

 ①治療によって治る認知症がある

       (頭の外傷後数ヶ月しておこる血腫、薬など)

 ②薬により、日常生活に支障のない軽い症状を維持できる可能性がある

 ③周りの家族が上手に対応できるようになる

 ④早めに、地域の介護サービスなどの情報を集められる

 ⑤自分の意思で身辺の整理や今後の生き方を決められる

があげられます。

 

認知症と診断を受けるのは辛いことですが、辛いと思える判断力をなるべく長く維持するためにも、早めの治療が奨められます。

 

 

健康情報番組をきっかけにして、「自分は認知症じゃないか?」と考えて医療機関に相談する方がおられます。しかし、自分で悩んでいる方の中で、実際に認知症の方は少数です。

 

だれでも年を経るにつれて、物覚えは悪くなり、物忘れはでてきます。

 

いわゆる認知症の物忘れは、「自分が物を忘れていることを忘れてしまう」ので、本人は困っておらず、自分で病院に相談することは少なく、ほとんどの場合で家族が心配して相談してきます。

 

では、一人暮らしの方はどうしたら良いでしょうか?

認知症の物忘れは、自分では気付きにくいことです。なるべく日頃から「かりつけ医」をもちましょう。物忘れがあれば、薬の内服状況から、医師が気付く場合があります(もちろん医療機関だけでなく、日頃から色々なところに顔を出しておくことは予防のためにも大切です)

 

家族の方が認知症を疑う症状としては以下のことがあげられます

①同じことを何度も言ったり聞いたりする。同じことで何度も電話してくる

②財布を盗まれたと言う

③だらしなくなった。服に無頓着になる

④降りる駅を忘れた

⑤急に夜起きて騒いだ

⑥置き忘れや閉じ忘れが増えた

⑦些細なことで怒りっぽくなった

⑧お風呂に入らなくなった

⑨お金の計算ができなくなって、財布に小銭ばかり入っている

⑩薬の数が合わない

 

 

 

「加齢による物忘れ」と「認知症の物忘れ」の違いは以下の通りです

認知症では全体を忘れる

 ご飯で何を食べたかではなくて、ご飯を食べたかどうかを忘れる

 テレビのリモコンの使い方ではなくて、リモコンが何かを忘れる

認知症では、記憶だけでなく判断力や実行力が低下する

 お風呂の入り方を忘れる

 釘を打つ、指でチョキをつくる、など簡単な動作ができなくなる

認知症では、もの忘れの自覚に乏しい

 自分で物忘れがあると思っていない

 分からないことを適当にごまかそうとする(取り繕い)

認知症では「なくした物」を誰かが取ったと言う

 (加齢による物忘れでは、なくし物を探す努力をする)

 財布を置いた場所を忘れているのに、誰かが盗ったと、怒る

認知症では日時や場所などが分からなくなる

 車で出かけたが、どこを走行しているか、分からなくなる

 何月何日か、季節などが分からなくなる

 相手がどんな人か分からなくなる(孫と子供を間違える)

認知症は進行性である

 

すべてがあてはまるのは、認知症が進んだ場合です。

おかしいな、と思ったら「かかりつけ医」に相談してみましょう

 

 

いわゆる認知症にはいろいろな病気が含まれますが、

 ①アルツハイマー型

 ②脳血管型

 ③レビー小体型

 ④前頭側頭型

の順に多いとされています。

 

①アルツハイマー型の例

1-2年で進行し、物を忘れたり、置き忘れたりする。作る料理が毎日同じ、冷蔵庫の中に同じものが沢山ある。忘れたことに関して、言い訳をする。日付が分からなくなる。同じことを何度も話す。

 

②血管性認知症の例

突然または繰り返し悪くなる。左側にいる人に気付かない。トイレの場所を間違える。今日したことを覚えていない

 

③レビー小体型の例

1-2年で進行し、立ちくらみや転倒を繰り返す。歩く時の歩幅が小さくなる。本人だけに人が見える(幻視)。洋服が上手く着られない。

 

④前頭側頭型の例

数ヶ月で進行。万引きしたり、信号無視したり反社会的行動をとるようになる。全裸で外に出ようとする。家族とも口を聞かない。片付けても、すぐに散らかす

 

 

日本人に、一番多いアルツハイマー型に対しては進行を抑える薬があります。また、それ以外の認知症でも治療によって本人の不安や理解が難しい行動を改善できることがあります。

 

早めに医師に相談してみましょう。

 

認知症に限らず高齢者には、

「住みなれた地域で、安心して、尊厳をもって、その人らしい生活を送る」ことが望まれます。

 

できるかぎり自宅で過ごすことが本人の安心につながりますし、病状の安定には大切なことです。

 

自分一人で快適な生活を続けることができなければ、介護認定(主治医の意見書が必要です)を受けることで、色々な介護サービスをうけることができます。

 訪問介護、訪問看護、グループホーム、通所介護 など

 

また、時には介護している家族を休ませてあげることも大切です。家族のリフレッシュは、回り回って本人へも良い影響を与えます。そのため、週末などには泊まりサービスを利用すると良いでしょう

 

本人にとっては辛いことですが、

 自分の判断力がなくなってしまった時のために成年後見人を決めておいたり

 認知症が進行した時の入所施設を探したり

することもその人らしさを維持するためには大切なことかもしれません。