気胸(自然気胸)
肺から空気がもれて、肺がしぼんでしまう病気です
最も多いのはやせ形で背の高い若年者(10-20代)です
また、喫煙者、COPDなどの中高年者にも気胸発症のピークがあります
発症は、10万人に4-50人と言われています
肺にできるブラ、ブレブという薄い袋がはじけて発症することが多いのですが、なぜブラやブレブが出来るかは不明です
原因となる遺伝子はありませんが、親子、兄弟での発症は少なくありません
発症に季節性はありません。気圧との関係を調べているグループもありますが、今のところ結論が出ていません
喫煙は悪い影響があるようです。女性の気胸は比較的少ないのですが、一部で月経周期と関連があります(月経随伴性気胸)
年齢的にも受験生が試験前に発症したりもしますが、幸い私の経験した患者さんでは、試験結果も良好でした
<症状>
重たい物をもった時、咳をした拍子に、何も誘因なく
プチッと音がした、呼吸がくるしい、胸が痛い、症状がでます
<検査>
レントゲンで肺がしぼんでいるのが確認できます
<治療>
肺がしぼむと、空気が入る部分が少なくなるため呼吸が苦しくなります
しかし、健康若年者では、正常な方の肺だけでも生命維持に必要な換気は可能なため、特殊な場合を除いて命に別状はありません
(特殊な場合:緊張性気胸、両側気胸)
軽度の空気漏れであれば、外来で通院しながら様子をみることもできます
(しかし、空気漏れが進行して緊張性気胸をおこすと、呼吸困難が増悪し、血圧が低下したりするため、何かあればすぐに病院を受診する必要があります)
中等度以上の空気漏れがあれば、脱気のチューブが必要であり、通常は入院を要します。空気漏れがなければ、チューブを抜くことができます
しかし、空気漏れは落ち着いても、破れ易いブラ、ブレブは残るため、脱気治療では半数近くで再発が起こります(特に1ヶ月以内)。また、2回目に気胸をおこしてブラやブレブを切除しない場合は再発率が8割と言われています
軽度、中等度の空気漏れに関わらず、気胸の再発率を下げる治療は手術です
手術の適応は
①再発を繰り返す場合
②空気漏れが続く場合
③両側の気胸
④空気だけでなく、血が出ている場合
⑤脱気しても肺が広がらない場合
⑥社会的な条件
パイロットは気圧の変動を受け、さらに飛行中に気胸になると危険
飛行機出張が多い場合(パイロットと同様)
潜水作業
海外出張が多い(海外で気胸になると大変)
です。しかし、手術をしてはいけない気胸はないため患者や保護者の希望があれば手術が行われます
ただし、手術をしても再発は0にはなりません。10%に下がるだけなので、その点も考えて治療法を決めましょう(半数が再発→10人に9人は再発なし、となるので有効な治療と言えるでしょう。しかし、手術をしても10代の再発率は20-30%程度なので手術を奨めない専門医もいます)
手術は、問題がなければ胸腔鏡(カメラ)で行われます。その場合は、2cm程度の傷が3-4カ所でできるため、傷も目立たず回復も順調です
癒着やブラが複雑なところにある場合は開胸手術(10cmくらいの傷)で行われます。開胸と胸腔鏡では、開胸の方が術後の気胸再発が少ないと考える先生もいます(が、やはり胸腔鏡が行われます)。
呼吸器疾患の中で気胸は、おなかで言えば盲腸(虫垂炎)くらいありふれた病気です。再発もありますが、命をとる病気ではありません。繰り返し再発していても年齢が上がると再発率も下がってきます。気落ちせずに前向きに治療に取り組みましょう