がん治療

 がん治療法は、手術、放射線、化学療法(抗がん剤)です。

「がん免疫」や凍結治療、温熱療法などについては、科学的検証が行われている途中であり、標準治療には含まれません。

 

 不適切かもしれませんが、がん治療がわかりやすいように「外来種」の話をします

 

動植物界では、日本にいる「固有種」よりも生命力や攻撃力の強い「外来種」が増加し生態系を破壊するなど、問題になっています。

 

アルゼンチンアリは日本のアリ比べて、小型なのですが攻撃性が強く駆除が困難と言われています。

 

あなたは、庭で日本アリを育てて観察するのを趣味にしています

 

しかし、ある時、ふと小さなアリの巣をみつけました。どうやらアルゼンチンアリの巣のようです。他を探しましたが、今のところ巣はそこだけのようです。しかし、このアリがどこからやって来たのか、他にもアリの卵があるかもしれないし、見つからない巣がある可能性も否定はできません。

 

あなたならどうしますか?

    見つかったアリの巣を周りの土ごと掘り出して捨てる

→手術です

体に見つかった「がん」(アリの巣)は根こそぎなくなります。

また、周りに「がん」が広がっていないか調べられます。顕微鏡で調べて「がん」の悪性度や再発率や推測することができます(病理検査)

「がん」(アリの巣)がそこだけであれば最も確実な治療法です。しかし、巣の数が多い場合は、全部は取り除けません。

また、もしかしたら、「がん」(アリの例えで言えば卵や隠れた巣)が他の部分にも潜んでいる可能性があり、その場合は後になって「がん」が再発してきます(他にもアリの巣ができてきます)。

 

 

    見つかったアリの巣と周りを焼く

→放射線治療です

手術同様に焼いたところ(放射線を照射したところ)に関しては「がん」(アリ)を駆除できます(あくまでも局所の治療です)。しかし、手術に比べると治療後に顕微鏡の検査ができないので、がんの顔つきが分からないこと、リンパ節などに広がっているかどうかが分からないこと、(議論はありますが)手術に比べて再発率が少し多い、ところが弱点です。

また、焼いた周りに副作用がでます(周りも焼けるので、皮膚のやけど、食道炎、肺炎などが起こります)。

    庭全体に防虫剤を撒く

→抗がん剤治療(化学療法)です

手術や放射線と違い、見つかった「がん」(アリの巣)だけでなく、潜んでいる「がん」(アリの卵や隠れた巣)にも効果があります。そのため、全身治療とよばれます。なるべくアルゼンチンアリ(がん細胞)だけをやっつける薬を撒きたいのですが、現状では少なからず日本アリ(正常細胞)にも影響があるため、濃い濃度で撒くと日本アリ(正常細胞)までも死んでしまいます。そのため、薬を撒ける量が決まっておりアルゼンチンアリ(がん細胞)を完全に駆除するのは困難であり、薬によっておこる副作用も全身に生じます。また、農薬が効きにくい一部のアルゼンチンアリが増えてくることがあり、効果が長続きしない原因になっています。最近では、アルゼンチンアリの弱点を狙い撃ちする治療(分子標的治療)が注目されており、一部は保険診療が可能です。

 

    (番外編)日本アリに力をつけさせる。アルゼンチンアリの天敵を連れてくる

→免疫治療です

生体の免疫力を上げて、「がん」(アルゼンチンアリ)を駆除する。全身に効果があるし、もともと体内にある免疫細胞を強くするだけなので副作用も少ない理想の治療です。しかし、理論は良いのですが、なかなか結果がついてきません。

 

それぞれの標準治療には、得意なところと不得手なところがあります。

多くのがんで、早期であれば治癒の可能性が最も高い「手術」が奨められます。

手術に耐えられる体力がない場合や手術で取り除くのが難しい深部に「がん」がある場合は「放射線治療」が行われます。

しかし、これらの治療法は局所の治療なので、手術の結果、「がん」の卵が残っている可能性がある場合は、それがレントゲンなどで見つからなくても、再発を予防するための「抗がん剤治療」を行うことがあります(手術+補助化学療法)。

また、一部のがんや進行度によっては、手術よりも抗がん剤治療の方が、治療効果が高いために、はじめから「抗がん剤治療」を行うことがあります。

 

「がん」の治療に関しては、ガイドラインで推奨される治療は決まっています。しかし、体調や年齢は人それぞれであり、その人にとって最適な治療法は異なってきます。

 

洋服屋さんと同じで、みんなが売れ筋の商品や流行の商品を選択する必要はありません。「主治医と患者さん」が一緒に、それぞれの人にあった治療法を考え、最適な治療を選択することが大切です(テーラーメード治療またはオーダーメード治療と言われています)。